奈良線の信号冒進事故について

今期は「異世界おじさん」「ぼっち・ざ・ろっく!」「チェンソーマン」「SPY×FAMILY」「水星の魔女」を見ています(本文と全く関係の無い前書き)。


(※注)もし本記事に誤り等がありましたら、遠慮無くコメント欄で罵倒ご指摘ください。適宜修正致します。

 

2022年11月28日午後6時頃、JR奈良線新田駅構内で列車が停止信号を冒進する事故が発生しました(JR西日本のプレスリリース)。

プレスリリースによれば、

18時00分頃、当該電車の運転士が新田駅に入駅する際、前方に電車が停車しているのを認め、ホーム手前に停車しました。その後、当該運転士は指令に連絡を行い、前方の電車が発車した後、新田駅の下りホームの所定停止位置まで運転を再開しました。調査の結果、当該運転士が新田駅に入る際に確認すべき信号機を、赤信号で行き過ぎていたことが判明しました。

列車が赤信号を行き過ぎた事象について(奈良線) – 西日本旅客鉄道株式会社

とのことである。

また京都新聞の記事によれば、

先行の快速電車が急病患者発生で駅に緊急停止し、駅の手前約350メートルにある信号が赤になった。自動列車停止装置(ATS)が作動したため、後続の普通電車の運転士はブレーキをかけながら進んだが、赤信号を通過し、前方に快速電車が止まっているのに気づいてから停止したという。

JR奈良行き普通電車の運転士が赤信号見落とし 駅構内の快速電車70m手前で停車 –  京都新聞

とのことである。

奈良線はATS-SW形を基本に、絶対信号機や分岐器、曲線等保安が必要な箇所にATS-P形を設置する拠点P方式を採用している。

新田駅は停留場(場内・出発信号機のない駅)なため、駅前後にある信号機は閉塞信号機である。拠点P方式では原則として閉塞信号機にはP形地上子を設置しないため、京都新聞の記事にある「ATSが作動」というのは、閉塞信号機600m手前に設置されているSW形のロング地上子を通過した事によりロング警報が鳴動した、という意味だと思っていた

しかし、Twitter有志の調査によれば、JR西日本は場内相当・出発相当の閉塞信号機1にもP形地上子を設置しており、新田駅前後の閉塞信号機にもP形地上子を設置しているという。

P形の直下地上子は通過すると列車を常用最大ブレーキ(自動空気ブレーキ車等は非常ブレーキ)で強制的に停止させられる。P形の閉塞信号機には直下地上子はないとか描いてたアホがいるらしい。私です。運転を継続するには、ブレーキ開放操作を行わなければならない。

となると、本来なら新田駅手前の閉塞信号機を通過した時点で常用最大ブレーキで停止させられているはずなのだが、この列車は冒進してから停車している。「前方に快速電車が止まっているのに気づいてから停止した」というのが、「運転士が列車を認めたと同時に常用最大ブレーキが動作した」のか「常用最大ブレーキは動作せず、運転士が列車を認めて手動でブレーキを掛けた」のか、どちらを意味しているのかはプレスリリースや新聞記事から読み取ることが出来ない。続報を待つしか無い。

 

いずれにせよ、閉塞信号機を冒進し先行列車に接近したというのは、ともすれば東中野駅列車追突事故を引き起こしていたかもしれないという、信号保安上非常に重要な事故である。JR西日本には「運転士に対し、信号確認の重要性を再徹底します。」という教育のみで終わらせるのではなく、保安システムの見直しも行って頂きたいと思う。

脚注

  1. 停留場の前後にあり、閉塞信号機ではあるが場内信号機・出発信号機と同等の扱いをする信号機のこと。