ATS-Ps表示器の分類

2022年11月20日

本ページでは、東北地方を中心に整備されているATS-Ps形の表示器について、普通列車用車両を中心にその形態別に分類しています。

以前「研究日誌」でも紹介いたしましたが、その後も変化が出てきたため以後はこちらで更新いたします。

 

用語

表内で用いる語の意味は次の通りです。

単独型 ATS-Psの情報のみを表示するタイプ
統合型 ATS-Psと他のATSの情報を1台で表示するタイプ
分離型 運転台上や他の部分に外付けで設置されるタイプ
内蔵型 運転台内に埋め込まれているタイプ

これらの語を組み合わせ、「単独分離型」「統合内蔵型」などのように表します。

 

単独分離型の例
阿武隈急行8100系
単独内蔵型の例
701系1500番台(F2-509編成以降)
統合分離型の例
701系秋田車
統合内蔵型の例
GV-E400系秋田車

 

単独型には、現在速度を示す緑色とパターン照査速度を示す橙黄色の2色表示のカラーバー、その下に左から、パターン発生(緑色)、パターン接近(橙黄色)、ブレーキ動作(橙黄色)、ブレーキ解放(橙黄色)、Ps故障(赤色)の各表示灯が並んでいる。またE721系500番台以降1では、それらの横に「主系」「従系」(以下、「2重系表示灯」)及び「併結」2表示灯が追加されている。しかし、E721系0番台P-40編成以降に落成した車両では、2重系表示灯がオミットされている。

ATS-Ps登場以前に落成した車両では分離型が搭載され、701系1500番台F2-509編成以降は主に内蔵型が搭載される3。私鉄・三セク車は、Ps形登場後に落成した車両であっても、JR東日本車両をベースとするもの以外では分離型を搭載する傾向にある。

 

統合型には、同じく現在速度を示す緑色とパターン照査速度を示す橙黄色の2色表示のカラーバー(P・Ps兼用)、その下に左から保安装置正常動作(緑色)、P電源(緑色)、パターン接近(橙黄色)、ブレーキ動作(橙黄色)、ブレーキ解放(橙黄色)、ATS-P(緑色)4、ATS-Ps(緑色)5、P故障(赤色)、Ps故障(赤色)の各表示灯が並んでいる。各種表示灯はLCDに変更されており、車種や機能によって表示内容を変更したりすることが可能になっている。また運転台が先頭以外になっている場合、文字が消えるようになっている。単独型と異なり、2重系表示灯や併結表示灯は存在しない。

統合型はPs形整備後に開発されたことから、いずれも内蔵型が搭載され分離型は登場していなかった。新潟駅高架化とそれに伴う新潟駅構内完全ATS-P化により、キハ110系新津運輸区車に統合分離型が搭載された。2020年2月現在、これが統合分離型唯一の搭載例であった。

2020年11月からは奥羽本線秋田駅〜青森駅間のATS-P形整備(東日本方式拠点P)に伴い、秋田車両センターの701系0番台・100番台にも統合分離型の搭載が始まった。

 

小海線営業所所属のキハ110系には統合分離型が、同キハE200形には統合内蔵型が搭載されているが、いずれも小海線に導入された無線式ATS-P(ATS-P(R))及び無線式閉塞システム(特殊自動閉塞式(車両ID照査式))に対応するため、以下の部分が異なっている。

  • 最左の表示部は青色点灯に変更。ここには2段で車上装置が自列車の位置を認識できているか、停車場の無線装置と通信できているかが表示される。
  • 自列車の位置を認識出来ている場合、表示部上段に「位置確定」と表示される。
  • 無線装置と通信出来ている場合、表示部下段に「無線接続」と表示される。停車場外に進出すると「無線範囲外」となり、次停車場が接近すると「無線要求」となる。「無線要求」となっている間は緑色になる。
  • それ以外の表示部は、他の統合型表示器と相違ない。

停車場外を走行中。「位置確定無線範囲外」となっている。

停車場が接近し、無線要求を行うマーカー地上子を通過すると、
「位置確定無線要求」となる。
地上装置との通信が確立すると「位置確定無線接続」となる。 Pパターンが接近した状態。

 

E531系はK407編成・K457編成以降は新製時から、それ以前の編成は改造によって単独分離型を搭載していたが、2021年頃より機器更新車は統合分離型に変更されるようになった。但し、保安装置本体はP形・Ps形で独立している(統合型ATS装置を搭載していない)ため、P区間では表示器は消灯する。

 


 

一覧

2021年8月現在で調べられた範囲で記載しています。この表にない形式がありましたらコメント等でお知らせいただけると嬉しいです。

×付の車両は廃車済又は改造済、は新製後又は改造後に追設された車両。

  分離型 内蔵型
単独型 HK100形
103系(RT-235編成)×
E127系
ET127系
185系(宮オオB2編成×、B6編成、OM06編成×6
E257系(0番台×
E351系×
415系(水カツ車)×
417系(阿武急A417系を含む)×
455系・457系×
485系(一部編成)
E501系
E531系(機器更新車は統合分離型へ変更)7
583系×
651系(0番台×、1000番台)
E653系(0番台〈K354編成のみ単独内蔵型の可能性?〉×、1000番台?、1100番台?)
717系×
719系(0番台×、700番台)
701系(0, 100, 1000番台及び1500番台F2-508編成まで。0, 100番台秋田車のうち一部は統合分離型へ変更)
IGR7000系
青い森701系
E751系
785系(クハ784-303のみ×
789系(0番台〈2016年3月21日まで〉)
阿武急8100系
キハ40系(東北・新潟地区に在籍するほぼ全車8
キハ58系(Kenji〈中間のキハ28形はSn〉)×
キハ100系
キハ110系(高タカ車9、新ニツ車、長コミ車は統合分離型へ変更)
ET122形
キハ141系700番台
三陸鉄道36-100形、200形、700形、R形(Z形は未調査)
会津鉄道AT-103?, 401, 500形、600形、700形(詳細未調査)
205系(3100番台10
211系(長ナノ車)
E491系
701系(1500番台F2-509編成からF2-518編成まで)
E721系(0番台P-39編成まで、500番台)
E721系(0番台P-40編成以降)
SAT721系
青い森703系
AB900系
キハE120形
キハE130系(0番台)
キヤE193系
キハE200形(統合分離型へ変更)
HB-E300系(橅編成・海里を除く)
 
は2重系表示灯・併結灯のある車両
は併結灯のみがある車両
は2重系表示灯のみがある車両
マーク無は両方存在しない車両
統合型 E257系(2000番台、2500番台、5000番台、5500番台)
E531系(機器更新車)
701系(0, 100番台秋アキ車の一部)
キハ110系(高タカ車11、新ニツ車、長コミ車〈ATS-P(R)対応〉)
キハE200形(ATS-P(R)対応)
E001形
E129系
E493系
E721系(1000番台)
EV-E801系
キハE130系(500番台)
キヤE195系
GV-E197系
HB-E210系
HB-E300系(橅編成、海里)
GV-E400系(新潟車、秋田車)

その他

  • E657系:TIMS表示型(TIMS画面に直接表示される)
  • JR貨物機:PF・Ps統合型
    • EH500形(仙台総合鉄道部車)、EF510形(JR貨物所属車)、EH800形、DD200形
    • EH200形は未確認
    • EF510形500番台のJR東日本所属時代は単独分離型?
Psモード(停車中・パターン無し) Psモード(走行中・パターン発生) Pモード(停車中・パターン発生)
 
Pモード(走行中・パターン発生) PF・Ps統合型の模式図  

関連記事

脚注

  1. 0番台よりも製造が先である。
  2. 起動加速度および減速性能の異なる形式と連結時に点灯。E721系の場合、車両性能及びパターンが701系と同等になる。
  3. 205系3100番台は運転台が新造されたので内蔵型であるほか、211系長ナノ車では運転台はそのままに内蔵型を埋め込んでいる。
  4. ATS-Pパターン発生表示。
  5. ATS-Psパターン発生表示。
  6. ソース:https://om08amagi.hatenablog.com/entry/2020/05/05/075850
  7. K407編成・K457編成以降は新製時搭載。
  8. くまげら編成キハ48 1521はSn。
  9. Ps形非搭載。
  10. 改造当初より単独内蔵型。
  11. Ps形非搭載。

Posted by Michinoku-Lab