信号機・標識
目次
現示方法による分類
機械式信号機
信号機の一部を物理的に動作させることで、信号を現示する信号機である。黎明期には、ボードを運転士に見えるよう正対させるか又は見えないように平行させるように回転するもの、ボールを上下させるものなどがあった。
世界で使用されている、あるいは使用されたもので一般的なのは、横方向に突き出た腕を上下させることで信号を現示する腕木式信号機である。日本においてもかつては全国で使用されたが後述の灯列式、色灯式の登場により置き換えられ、現在も現役で使用されているものは、津軽鉄道線の五所川原駅及び金木駅の場内信号機3基のみである。また入換信号機には円形白色灯(円形白色反射板)を水平に2つ並べ、これを斜めに回転させることで進行現示とするものが使用されていた1。
腕木式信号機には、腕の作用方向から下作用式と上作用式に分けられる。腕水平時にもっとも制限の厳しい現示となり、下作用式では左下向き45度・下向き垂直の順に、上作用式では左上向き45度・上向き垂直の順に、それぞれ制限が緩和される。
これら信号機の腕はそれぞれその役目を遠方からでも認識できるように、腕の形状及び塗装が異なっていた。これらは閉塞信号機を除き、鉄道運転規則(昭和62年3月2日運輸省令第15号)第191条で定められていた。現在の鉄道に関する技術上の基準を定める省令では、特に定められていない。
信号機 | 塗装 | 腕の形状 |
---|---|---|
場内信号機 出発信号機 |
赤色 | 長方形 |
閉塞信号機 | 腕端が槍形 | |
遠方信号機 | 橙黄色 | 腕端が矢はず形 |
通過信号機 | 腕端が"ばち"形 |
国有鉄道信号規程(大正10年10月14日鉄道省令第3号)では第169条から次のように定められていた。
信号機 | 塗装 | 腕の形状 |
---|---|---|
場内信号機 | 赤色 | 長方形 |
出発信号機 | 赤色 | 長方形 |
閉塞信号機 | 赤色 | 尖形 |
掩護信号機 | 赤色 | 長方形 |
出発信号機の 遠方信号機 |
橙黄色 | 腕端が"ばち"形 |
場内信号機の 遠方信号機 |
橙黄色 | 腕端が矢はず形 |
誘導信号機 | 赤色 | 長方形 |
入換信号機 | 赤色 | 長方形 |
表面は、赤色の腕にあっては白色線が、橙黄色の腕にあっては黒色線が、それぞれ一条その先端形状に合わせて塗られていた。背面はいずれも白色塗装に黒色線1条が画されていた。
下作用2位式場内信号機 津軽鉄道線 五所川原駅 |
下作用2位式閉塞信号機 |
上作用3位式閉塞信号機 |
灯列式信号機
同一色の灯火の位置や並び方により信号を現示する。
現在、日本においては主に中継信号機、入換信号機、誘導信号機に使用されている。但し、事業者によっては次に説明する色灯式を利用しているところもある。
中継信号機(灯列式) 制限信号を現示している |
入換信号機(灯列式2位式) |
誘導信号機(灯列式) | 入換信号機(赤色灯有3位式) |
色灯式信号機
現在世界で最も普及している方式で、複数の灯色を組み合わせて点灯・点滅させることで信号を現示する。
日本においては、場内信号機、出発信号機、閉塞信号機、遠方信号機、通過信号機において汎用され、事業者によっては中継信号機、入換信号機、誘導信号機でも使用されている。背板は信号の種類によって異なり、旧国鉄及びJRでは場内・出発・閉塞信号機は楕円形、遠方・通過信号機は四角形にして区別している。
灯火色には、赤色(R)、橙黄色(Y)、緑色(G)を使用する。灯数により、単灯式2、2灯式〜6灯式が存在する。現示の種類は次のとおり。
- 高速進行(GG)
緑色灯を3灯間隔を空けて2つ点灯させる。現在、京成スカイアクセス線で、またかつては北越急行ほくほく線で使用される。同線では130km/h以上での走行が許可される。北越急行では自動列車停止装置であるATS-P形のトランスポンダ車上子、京成は列車選別装置の車上子からの信号を地上側で受信(北越急行では3閉塞手前)して、130km/h以上での進行が可能な場合に進行現示から高速進行現示に切り替えている。 - 進行(G)
緑色灯を1つ点灯させる。高速進行を現示する線区においては130km/h以下で、それ以外の線区においては線区最高速度で運転することができる。 - 抑速(YGF)
橙黄色灯と緑色灯を2灯間隔を空けて80回/分の速度で点滅させ、次が減速信号であることを予告し、105km/h以下への減速を指示する。1995年に京急本線品川駅 – 橫浜駅間で線区最高速度を120km/hに引き上げる際、閉塞間隔・閉塞数を変更せずに最高速度を上昇させるために導入された。また京成スカイアクセス線を構成する北総鉄道北総線においても2009年に導入されている。 - 減速(YG)
橙黄色灯と緑色灯を2灯間隔を空けて点灯させ、次が注意信号もしくは警戒信号であることを予告する。また、事業者により50 – 85km/h以下への減速を指示する。 - 注意(Y)
橙黄色灯1灯を点灯させ、次が警戒信号もしくは停止信号であることを予告する。また、事業者により40 – 65km/h以下への減速を指示する。 - 警戒(YY)
橙黄色灯を2灯間隔を空けて2つ点灯させ、次が停止信号であることを予告・25km/h以下への減速を指示する。腕木式信号機で現示する必要がある場合は、通常の停止-進行2現示の腕木式信号機の下に副信号腕(先端は下向45度時に水平になるよう切られている)が追加される。停止現示や進行現示の場合は、通常の2位式腕木式信号機と同一である。警戒現示の場合、副信号腕が下向垂直から下向45度となり橙黄色灯が点灯する。同時に主信号腕の緑色眼鏡が橙黄色眼鏡に切り替わり、上下とも橙黄色が点灯することで警戒現示となる。単灯式信号機で現示する場合は、上位に橙黄色のみの単灯信号機を置き警戒現示の際に点灯させる。 - 停止(R)
赤色灯1灯を点灯させ、防護区間外方で停車することを指示する。ただし、信号機故障により閉塞指示運転(閉塞信号機の場合)や手信号による誘導がある場合は、内方に進入することが出来る。また、入換信号機や誘導信号機が進行を指示する現示である場合も同様である。
色灯式信号機の現示例 Made by w0746203-1
設置形態による分類
常置信号機
一定の場所に常置して使用する信号機を指す。場内信号機、出発信号機、閉塞信号機、誘導信号機、入換信号機、中継信号機、遠方信号機、通過信号機が該当する。見通し距離について、場内・出発・閉塞・遠方信号機は600m以上(地形など特別な理由がある場合は200m以上)、中継・入換信号機は200m以上、誘導信号機は100m以上を確保することが求められている。
主信号機
他の列車の不存在を保証する防護区間を有する信号機を指す。場内信号機、出発信号機、閉塞信号機、誘導信号機、入換信号機が該当する。信号機の防護区間を「信号機の内方」、信号機の手前を「信号機の外方」と呼び、区別する。
但し、非自動閉塞方式を採用する区間における出発信号機は防護区間を持たず、先の進路が適切に開通しているか否かを示している。また通票等を使用する閉塞方式の場合は、信号機が進行を指示する現示の場合であっても、運転士は通票等を所持していなければ列車を出発させてはならない。
絶対信号機
駅の管理下にあり、駅長の意思を示す信号機である。場内信号機、出発信号機、誘導信号機、入換信号機が該当する。分岐器や他の進路の開通状況により信号操作の可否が変わる。停止信号が現示されている場合、列車・車両は手信号により誘導される場合を除いて、その防護区間の内方に進入することができない。現在、これら絶対信号機は連動装置により制御され、手動による操作も可能であるため「半自動信号機」とも称される。
場内信号機
列車に対して停車場内への進入の可否・開通している進路を示し、停車場内外の境界を示す信号機である。
出発信号機
列車に対して停車場外への進出の可否・開通している進路を示し、停車場での停止位置の限界を示す信号機である。線路間隔等により所定位置に出発信号機を設置できない場合は、別途「列車停止標識」を設置する。
誘導信号機
鉄道においては、線路を「閉塞区間」として一定の間隔で区切り、1つの閉塞区間に1つの列車のみ存在できるようにすることで衝突事故を防いでいる。しかしこれを守る場合、1つの閉塞区間に2以上の列車を進入させることが出来ず、併結させることができない3。誘導信号機が進行現示の場合、列車は15km/h以下で既に列車の存在する閉塞区間に進入することが出来る。
誘導信号機は、場内信号機もしくは入換信号機に併設される。旧国鉄・JRでは、場内信号機には灯列式・色灯式のいずれかが使用されるが、入換信号機には原則として色灯式が使用される4。いずれも停止現示時には消灯している。進行現示時には、灯列式は右上向45度に白色灯2灯を、色灯式は橙黄色灯1灯を点灯させる。
入換信号機(・入換標識)
車両基地や停車場内で車両を入換作業を、係員による誘導なしで行うために設置される信号機である。入換標識と異なり防護区間を持ち、内方には軌道回路が設置される。入換信号機の内方は45km/h以下で進行することが出来る。入換信号機の防護区間終端には、別の入換信号機、車両停止標識もしくは車止標識が設置される。国有鉄道信号規程が制定される以前は側線信号機と称された。
入換信号機は防護区間を持つ特性上、入換信号機の内方には1つの列車・車両しか存在することが出来ない。防護区間の内方に更に列車・車両を進入させたい場合には、入換標識として操車係による誘導を行うか、誘導信号機を点灯させる必要がある。
灯列式と色灯式の2種類が存在する。灯列式は主に旧国鉄・JRで採用されている。入換標識と同一形状のため、入換信号機識別標識(紫色灯)が付属し、点灯時には入換信号機として、消灯時には入換標識として機能する。色灯式は主に私鉄で採用されており、その形態は様々である。また、灯列式の場合であって識別標識が付属していない場合であっても、事業者によってはそれを入換信号機として扱っている場合もある。灯列式の現示方法は次の通りである。
入換標識は、停車場や車両基地内において操車係に対して進路が開通してるかを表示する標識である。入換信号機と異なり防護区間を有さないため、入換作業の実施には操車係からの入換合図が必要となる。
灯列式 | 色灯式 | |||
---|---|---|---|---|
2位式 | 3位式 | 2位式 | 3位式 | |
停止信号 | 白色灯2灯水平 (もしくは、左白色灯+右赤色灯) |
赤色灯 | ||
注意信号 | – | 白色灯2灯 右上向45度 |
– | 橙黄色灯 |
進行信号 | 白色灯2灯 右上向45度 |
白色灯2灯垂直 | 緑色灯 |
新幹線鉄道においては「地上信号機」と呼称される。また紫色灯が併設される場合もあるが、こちらは「入換標識識別標識」と呼称され、点灯時・消灯時の意味が逆となる。即ち、消灯時に地上信号機(入換信号機)として、点灯時に入換標識として機能することになる。
許容信号機(閉塞信号機)
先の区間における列車の在線状況により、信号現示が自動で変化する信号機である。閉塞信号機が該当する。閉塞信号機は、軌道回路を用いて列車の在線・不在線を検知し、また先の区間の列車の在線・不在線情報から現示を自動的に決定している。このため、「自動信号機」とも呼ばれる。閉塞信号機は、絶対信号機と異なり一般的に駅間に存在し、故障時に誘導要員を派遣するのに時間がかかってしまう。このため、停止現示が1分以上持続した場合は、ある条件下でその内方へ進行することが許されている。
閉塞信号機は場内信号機や閉塞信号機と同じ背板を使用しているため、信号機には閉塞信号機識別標識5を設置し、区別している。
現在では閉塞信号機のみとなったが、かつては勾配区間に設置され重量列車に対して有効となる勾配信号機も存在した。これは、勾配区間で重量列車が停止してしまうと、再発進が困難となってしまうからであり、対象列車はいつでも停車できる速度であれば停止信号であってもその内方へ進行することが出来た。
閉塞信号機(緩行線上り第7閉塞) 中央線各駅停車 阿佐ヶ谷駅 |
掩護信号機
停車場外で他の線路と平面交差したり可動橋があるなど、特に信号防護を必要とする場所に設置される信号機。東洋書籍出版協会編「列車運転及信号取扱心得並解釈」によれば、山陽本線支線(和田岬線)の和田旋回橋の両端に設置された腕木式場内信号機と同型のものや、常磐線泉駅-湯本駅間で馬車鉄道6と交差する地点に設けられた円板信号機などがあった。現在、この名称で使用される信号機はない。現在は、神奈川臨海鉄道本牧線本牧埠頭駅近傍の本牧埠頭第1踏切に設置されている下り用のものが現存している。
踏切などの防護のために絶対信号機を設置する例として
掩護信号機というのがあります。
神奈川臨海鉄道本牧埠頭駅の踏切近傍に設置されている信号機がそれで踏切を遮断する為のスイッチを操作すると道路交通を遮断して鉄道側が進行にかわります。 https://t.co/5afazk3Jbt pic.twitter.com/pl8soHzFMX— komy89 (@komy89) September 25, 2020
従属信号機
主信号機に従属し、従属する主信号機の現示を予告する信号機である。遠方信号機、通過信号機、中継信号機が該当する。主信号機と異なり、防護区間を有さない。
遠方信号機
非自動閉塞方式、自動閉塞式(特殊)、特殊自動閉塞式、非自動閉塞方式を採用する区間において、見通しの悪い場合もしくは通過列車が存在する場合に設置される信号機である。上述の通り、大正時代には現在の通過信号機も内包していた。
従属信号機ではあるが、その内方では主信号機同様に現示による速度制限を受ける。1停車場間1閉塞であったり非自動閉塞方式の場合、進行現示で停車場を出発したとしても、次の閉塞(=次停車場内)が開通しているとは限らない。場内信号機が停止現示の場合、高速度で走行していると減速しきれず信号冒進となってしまう。このため、遠方信号機により場内信号機の現示を予告して速度節制を行わせること、すなわち第一閉塞信号機と同じように振る舞わせることで列車を減速・停止させることが出来る。
場内信号機の現示 | 遠方信号機の現示 |
---|---|
停止信号 | 注意信号 |
警戒信号・注意信号 | 減速信号 |
進行信号 | 進行信号 |
遠方信号機はそれ自身は停止信号を現示しないため、四灯式信号機では赤色灯が省略される。また主体となる場内信号機の見通しが悪い場合、別途中継信号機が建植される。
大正時代の腕木式信号機では、国有鉄道信号規程により次のように現示していた。また、出発信号機に従属するものは通過信号機と呼ばれた。
場内信号機 | 場内信号機が 2位式の場合 |
場内信号機が 3位式の場合 |
---|---|---|
停止信号 | 注意信号 腕水平 |
注意信号 腕上向45度 |
注意信号 | — | 進行信号 腕上向90度 |
進行信号 | 進行信号 腕下向45度 |
進行信号 腕上向90度 |
通過信号機
場内信号機に2位式信号機を採用する場合に、通過列車が存在する停車場の場内信号機直下に併設される信号機である。通過可能な線路に対してのみ設置される。上述の通り、大正時代には遠方信号機の一形態として扱われていた。
場内信号機が2位式の場合、場内信号機は停車場内への進入の可否のみを示し、出発信号機の現示を予告しない。場内信号機進行現示・出発信号機停止現示の場合、列車は減速しながら停車場内へ進入・停止しなければならないが、出発信号機の見通しが悪いと現示の確認が遅れて信号冒進となってしまう。このため、通過信号機により出発信号機の現示を予告する。
場内信号機の現示 | 出発信号機の現示 | 通過信号機の現示 |
---|---|---|
停止信号 | 問わない | 注意信号 |
進行信号 | 停止信号 | 注意信号 |
進行信号 | 進行を指示する信号 | 進行信号 |
中継信号機
自動閉塞方式を採用する区間において、場内・出発・閉塞の各信号機に従属し、見通しが悪い場合にその現示を予告する信号機である。遠方信号機や通過信号機とは異なり、1つの主信号機に対して複数個設置されることがある。
灯列式と色灯式の2種類がある。灯列式は旧国鉄・JR及び多くの私鉄では採用されており、3つの白色灯の並び方により主信号機の現示を予告する。色灯式は地下鉄など灯列式の設置が難しい箇所には設置されている。最下部に識別灯として紫色灯1灯と常点灯させ、主信号機と同じ現示を行うことで予告を行う。
主信号機の現示 | 中継信号機の信号 | 灯列式中継信号機の現示 |
---|---|---|
高速進行信号 | 高速進行中継信号 | 白色灯垂直×2 |
進行信号 | 進行中継信号 | 白色灯垂直7 |
減速・注意・警戒信号 | 制限中継信号 | 白色灯右上向 |
停止信号 | 停止中継信号 | 白色灯水平 |
新幹線鉄道においては「地上中継信号機」と呼称され、主体となる地上信号機の現示を中継する。
色灯式中継信号機 Taken by w0746203-1 from Wikipedia |
灯列式中継信号機 ほくほく線 大池いこいの森駅 高速進行中継信号を現示している。 |
遠方信号機 仙山線 北山駅 – 北仙台駅間 進行現示であり、場内信号機が進行現示であることを予告している。なおこの曲線の先には場内中継信号機が存在する。 |
場内信号機と通過信号機(1) 大鰐線 鯖石駅 場内・出発信号機が共に停止現示であるため、通過信号機は注意現示である。 なお画像では、下位の橙黄色灯が電球切れのため消灯している。 |
場内信号機と通過信号機(2) 場内信号機が警戒現示・出発信号機が停止現示のため8、通過信号機は注意現示である。 なお画像では、下位の橙黄色灯が電球切れのため消灯している。 |
場内信号機と通過信号機(3) 場内・出発信号機が共に進行現示であるため、通過信号機は進行現示である。 |
車内信号機
閉塞方式として、車内信号閉塞式、ATC方式、移動閉塞式を採用する区間を走行する車内の運転台に設置される信号機である。これらの閉塞方式を採用する区間では、入換信号機等の一部を除き、その閉塞区間内で出せる最高速度(許容速度)が運転台の車内信号機に表示される。
一般に車内信号機の表示器は、速度計の外周に取り囲むように設置されている。許容速度の現示段数が少ない信号機では、許容速度が丸囲みの数字で表示される。現示段数が多い場合は、許容速度がマーク(多くは▽)で示される。
臨時信号機
工事や災害等により、一時的に列車の最高速度を制限しなければならない場合に設置される。見た目は標識然としているが、旧鉄道運転規則第二百十一条において信号機とされている。
徐行予告信号機
この先に徐行信号機が存在することを予告し、徐行信号機の400m手前に設置される。白の三角形に黒の小さい三角を組合わせたもので、その下には規制速度が表示される。事業者によっては、夜間の視認性向上のために白の部分を蛍光オレンジにしているところもある
徐行信号機
臨時規制区間の始端に設置される。白縁の黄色円板で、その下には規制速度が表示される。
徐行解除信号機
臨時規制区間の終端に設置される。白縁の緑色円板である。但し、一般の速度制限標識と同じく編成全体が臨時規制区間を通過しなければ徐行解除とはならない。このため、事業者によっては別途編成長に合わせて「徐行解除目標」を設置している。
手信号
信号機が故障により使用できない場合に、それらの主信号機の代用として使用する信号機である。
代用手信号
場内・出発信号機およびそれに相当する車内信号機が故障により使用できない場合に使用する手信号である。現示は停車場内の「代用手信号現示位置」と書かれた位置で行う。係員の派遣が困難な場合等には「手信号代用器」が設置され、これにより手信号を現示する。
通過手信号
通過信号機が故障により使用できない場合に使用する手信号である。「進行」の1種類のみ現示可能である。
臨時手信号
代用手信号・通過手信号を用いる以外の場合において、手信号を現示する必要がある場合に使用する手信号である。
信号附属機
進路予告機
場内信号機や出発信号機で進路が2以上に分岐している場合、分岐によっては極端な減速を強いられる場合がある。このため分岐箇所の一つ手前の信号機で、予め開通している進路を予告するために設置されている。白色灯2灯を使用する場合、最大3進路を予告することができる。
点灯状態 | 分岐方向 | ||
---|---|---|---|
本線と左右方向 に分岐する場合 |
本線と左方向に 分岐する場合 |
本線と右方向に 分岐する場合 |
|
左右両方点灯 | 本線が開通 | ||
左のみ点灯 | 左方向に開通 | 左方向に開通 | – |
右のみ点灯 | 右方向に開通 | – | 右方向に開通 |
進路表示機
複数の番線や路線が出入りする停車場では、場内信号機や出発信号機に番線表示標を設置し、どの信号機がどの進路・路線に対応しているかを区別している。通常は1進路に対して1つ信号機が設置されるが、設置場所の制約等によりこの原則を守れない場合がある。この場合、1つの信号機で複数の進路に対して信号現示を行うが、どの進路に対して信号を現示しているかを示すのが進路表示機である。主体となる信号機が信号を指示する信号を現示している場合のみ点灯し、停止現示の場合は消灯する。
表示方法には、T字型に白色灯4灯を並べたものを使用する2進路用、3×3の正方形に白色灯9灯を並べたものを使用する3進路用9、入換信号機(標識)に使用する入換3進路用10数字や文字により進路を表示する多進路用がある。
2進路用 | 3進路用 | 入換3進路用 | |
---|---|---|---|
左方向に開通 | ┐に点灯 | ┐に点灯 | ┐に点灯 |
本線に開通 | – | |に点灯 | ┳に点灯 |
右方向に開通 | ┌に点灯 | ┌に点灯 | ┌に点灯 |
番線表示標
信号機の対応する進路を示す。
信号機使用停止標
原則として信号機が消灯している場合は、その信号機は故障しているものとして現示できる信号のうち最も制限の強いものを現示しているとして扱う。このため使用停止中の信号機には、黒いカバーをかける・白色のバツ印を取り付ける・信号機を側方に向けるなどの処置を行う。しかし、併合閉塞を実施する場合など意図的かつ定期的に信号機の使用を停止する場合、その度にこれらの処置を行うのは非効率的である。
このため、信号機の使用を停止している場合は信号機使用停止標(白色バツ形)を点灯させる。これにより、信号機が消灯している場合であってもこれを無視して進行して良いことになる。
なお、信号機使用停止標は場内信号機・出発信号機にのみ設置され、遠方信号機や中継信号機には設置されない。これは、後者は従属信号機でありその現示に強制力はないためである。
進路予告機 |
進路表示器(進路2進路用) 青い森鉄道線・奥羽本線・津軽線 青森駅 進行信号を示す出発信号機は青い森鉄道線・奥羽本線向けのもので、奥羽本線側に開通していることを示している。一段下の信号機は津軽線向け。 |
右方向への開通を示す進路表示機(入換3進路用) 東北本線 仙台駅 |
左方向への開通を示す進路表示機(入換3進路用) 東北本線 仙台駅 |
進路番号211への開通を示す進路表示機(入換多進路用) 東北本線 郡山駅 |
場内信号機の下に設置された進路表示機(進路3進路用) 東海道貨物線(品鶴線) 新鶴見信号場 信号機上部には対応する進路の番線表示標が付属している。 |
番線表示標の例(開通進路を表示) 鶴見線 安善駅 左:本線第一出発信号機 右:大川支線出発信号機 |
番線表示標の例(対応番線を表示) 東北本線 仙台駅 |
信号機の使用停止例 常磐線 浜吉田駅 消灯の上、前面に白色のバツ印が取り付けられている。 |
信号機の使用停止例 東北本線 盛岡駅 入換標識が側方に向けられている。 |
場内信号機と信号機使用停止標の併設例 山田線 上米内駅 併合閉塞未実施のため、場内信号機が点灯し使用停止標は消灯している。 |
場内信号機と信号機使用停止標の併設例 併合閉塞実施中のため、場内信号機が消灯し使用停止標は点灯している。 |
東北本線 仙台駅の上り第2場内信号機群。物理的に侵入できない3番線(中2)以外の全ての線路に進路を取ることが出来る。上り線のため、5番線(上本)の信号機が単独で一番高い位置に配置され、他の進路の信号機には多進路用進路表示器が付属する。なお第1場内は北東方の仙台車両センター出区線との合流部付近に、第3場内は各ホーム手前に設置されている(上4は第2場内まで)。
仙山線の上り第2場内信号機群。東北本線と異なり、1番線(下本)、5番線(上本)に進路を取ることが出来ない。仙山線の上りのため、8番線(山上)の信号機が一番高い位置に配置される。2番線(中1)から7番線(山下)までの信号機には多進路用進路表示器が付属し、上4は3灯形単独となっている12。第1場内は東照宮駅東方に設置され、第3場内は東北本線上りと共用する。
東北本線の下り第1場内信号機群。全ての線路に進路を取ることが出来る。本線となる1番線(下本)が最も高いところに設置され、右隣に2番線から8番線までの信号機、更に隣には上4用の信号機がある。下本と上4は第1場内のみかつ駅北方の合流手前には安全側線があるため注意現示で進入可能である。2番線から8番線には第2場内があり、かつ併結時には第2場内が停止現示となることから4灯警戒形が採用されている。進路開通時には2枚目のように営業番線の数字がドットマトリックスで表示される。
仙台駅における営業番線名と運転番線名、及び各方面に対する着発の可否を示した表が以下である。
営業番線 | 運転番線 | 東京方面 | 青森方面 | 羽前千歳方面 |
---|---|---|---|---|
1番線 | 下本 | 着発可 | 着発可 | 不可 |
2番線 | 中1 | 着発可 | 着発可 | 着発可 |
3番線 | 中2 | 着発可 | 不可 | 不可 |
4番線 | 中3 | 着発可 | 着発可 | 着発可 |
5番線 | 上本 | 着発可 | 着発可 | 不可 |
6番線 | 上1 | 着発可 | 着発可 | 着発可 |
7番線 | 山下 | 着発可 | 着発可 | 着発可 |
8番線 | 山上 | 着発可 | 着発可 | 着発可 |
(ホームなし) | 上4 | 着発可 | 着発可 | 着発可 |
脚注
- 同じように入換標識にも機械式があり、こちらは灯火又は反射板を青紫色にして区別した。
- 灯火前のカラーフィルターを切り替えることで現示を変化させる。
- 1つの列車を2以上に分割することは問題ない。また、「場内信号機外に列車を停止させて入換標識により列車を場内に進入させれば良い。」という考えについては、入換標識・入換信号機は既に停車場内に存在する車両に対してのみ表現示可能であり、停車場外にある列車に対して現示させることはできない。
- どうやら新津駅では入換信号機に対しても灯列式を採用しているようである(参考)。
- 一般には数字で、次の停車場に近づくにつれて数字が小さくなっていく。同一方向に複数の線路が並列する場合は、別に文字等を付して見分けがつくようにする。
- おそらく小名浜馬車鉄道(現在の福島臨海鉄道本線の一部)を指すと思われる。(参考)
- 高速進行中継信号が現示可能な中継信号機では、上位3灯を消灯させる。
- これは、場内信号機が「過走余裕があるため速度制限なく停車場に進入できる(進行信号)」「過走余裕がないため25km/h以下で進入せよ(警戒信号)」であり、出発信号機の現示に連動しないためである。
- 左右のみ使用する場合もある。
- 通常の3進路用同様左右のみ使用する場合もある。
- この場合「2」は2番線を指すのではなく、入換2番を指す。
- 駅南方の合流部に安全側線があるため注意現示で進入出来る。
ディスカッション
コメント一覧
抑速信号は1分間に80回の点滅なので 80回/1min= 80回/60sec = 1.33Hzになります。
(80Hzだと点滅では無く、薄暗く見えるだけになります。)
では、
思いっきり間違えてましたね・・・。直しておきます。