コミケにおける献血に関する一部界隈からの批判について
皆様、あけましておめでとうございます。本年も「みちのくラボ」をどうぞよろしくお願いいたします。
昨年はブログ更新が滞ったり、VPSを契約したのに遅々として移転が進まなかったり、就職して2年目なのに仕事が美味く進まないなどいろいろありましたが、今年はそういった点を改めていきたいと思います。
さて2年ぶりに開催されたコミックマーケット新C99(C99A1)。ここでは毎年日本赤十字社が献血バスを出しており、それにオタク達が献血協力をしているわけですが、それについて一部から変な声が上がっていたようです。
「献血を募る場所を選べ」
既にアカウントが削除されていますが、@srin0528なる人物が次のような発言をしていたようです。
【速報】
献血オタク差別発言の無題 @Srin0528 氏、アカウント削除別のフェミのサブ垢だとしたら
また同じことしそうではある pic.twitter.com/mS3yZNvqVS— 幻集郎先生@マッチングアプリは正しく使おう (@ky2chui) January 2, 2022
元のツイートも既に削除されてしまっているため別の方がスクリーンショットを撮られたものの引用となりますが、「なにとは言わないけど、献血を募る場所は考えて欲しい。輸血が必要な人は血を選べないんだから。」と発言しています。
これは非常に悪質で、非常に集団差別的な発言としか言いようがありません。発言が1月1日であることからコミックマーケットでの献血のことを指していると思われますが、「オタクの血は汚れている」といった差別的発想(しかもエビデンスが全く存在しない感情論である)は非常に残念でしかありません。
献血できるかどうかの基準については日本赤十字社から公表されていますが。その中に「不特定の異性または新たな異性との性的接触があった。」というものがあります。これは性的接触相手がHIV等に感染しており、献血者自身がそれによって感染したとしても、およそ6ヶ月間はウイルスDNAが十分に増加せず、感染症スクリーニング検査が陰性になってしまうからです(これを「ウィンドウ期」という)。もしHIV等に汚染された血液を輸血してしまっては大変なことになってしまいます。そのため、これらに該当する人は6ヶ月間献血することが出来ません(実際私もそうでした)。
そのため、どうせそういうふしだらな事なんてしてないでしょと目されているオタク達(この考えも差別的ではないかと思うのですが)に、そしてわずかな開催期間及びGWや年末年始といった献血者が少なくなる時期にとても多くの人々が集まるコミックマーケットに白羽の矢が立っているわけです。
そもそもコミケでなかろうが普段から献血に協力してくれているオタクはいるわけですから、コミケに献血バスを動員しなかろうが「オタクの血」は必ず医療機関に出回ることになります。
そういった意味では、コミケで献血に協力してくれている方々、そして普段からも献血に協力している方々に対しても、非常に失礼な発言なのです。
「2日間で590人は少ない」
これは元発言がどこからなのか把握できなかったのですが、「2日間で590人の献血者は少ない」と行った人が居るようです。
コミケ献血590人に「少ない」って文句つけてる人、典型的な「具体的なものが何一つ見えない人」だなぁという気持ちになった。安全手順を踏んで採血してパウチして…って極めて精密でリスクの伴う作業を一日で590人回すイメージが具体的に一切出来ないんだろうな…。
— 借金玉 (@syakkin_dama) January 2, 2022
コミケの献血
とにかくオタクのやることに難癖つけたい感じの人が「5万人も集まって、たった500人かよ」と嘲笑っているの見かけたけど、受付から終了まで早くても30分~1時間くらいかかる事を考えれば、2日間で500人は物理的な限界に近いのでは?
— アオイ模型 (@aoi_mokei) January 2, 2022
ちなみに590人という数字はYahoo!ニュースでも取り上げられており、数字自体に間違いは無いようです。
「献血」とひとくくりに言いますが、現在行われている献血には、主に赤血球製剤を作るための「全血献血」、血漿2製剤を作るための「血漿成分献血」、血小板製剤を作るための「血小板成分献血」の3種類があります。
このうち血漿成分献血と血小板成分献血は、目的の成分のみを採取するための遠心分離機と必要としない成分即ち赤血球や白血球等を献血者に返すための返血機構を必要としており、献血センターでのみ実施しています。
そのため、コミックマーケットに動員される献血バスで実施している献血は、400mL全血献血のみとなります。全血献血には200mLもありますが、輸血による感染リスクを低減させるために現在は原則行われていません。
さて、献血者数や血液製剤の製造等の実績については、日本赤十字社がホームページで公開しています。
東京都における400mL献血者数は年間で延べ約35万人(令和2年度血液事業年度報38ページ)となっています。献血センターは基本的に大晦日と元日のみ休みで、それ以外の日は平日祝日を問わず営業しています。平年で考えますと、350,000人÷363日=964.187…..となるので、1日で964人が献血していることになります。
そう考えた場合、2日間で590人というのは、果たして「少ない」と言えるのでしょうか。1日目で約300人、2日目で約290人。1日で大凡東京都での1日献血者数の1/3を賄ったことになるのですから、これを「少ない」という事には無理があります。
「でも来場者上限は55,000人なんだから、0.5%しか献血してないじゃないか!」と思うかもしれません。確かにパーセンテージで見ればそうです。しかし、献血センター側も出せる献血バスの台数には限りがあります。また、全血献血そのものは10~15分で終わりますが、献血の前には問診や医師の診察、ヘモグロビン値の確認がありますし、献血後には体調不良がないか30分は健康観察を行う必要がありますし、採血する側も採血機械の整備や血液バッグの後処理が必要となります。そういった事を考えると、1人あたり大凡1時間程度はかかると見ないといけません。
また誰しもが献血できるわけではありません。詳しくはホームページに書かれていますが、400mL献血の場合男性では50kg以上体重がなければ献血できません。また、血圧や脈拍、ヘモグロビン値等々の基準があり、これに適合していなければ献血できません。コミケに参加した人の中にはこの基準に適合していない人も居るでしょう。
また、献血では通常の病院での採血に用いる針(22G、23G)よりももっと太い18Gの針を使います。そのため、針で刺される恐怖心などから迷走神経反射を起こし、気絶してしまう方も少なくはありません。
それらを考慮すれば、参加者の0.5%、東京都の1日あたりの献血者数の1/3が献血してくれた、というのは決して「少ない」とは言えないでしょう。ただ単に献血者数のみを見て、それ以外のデータを全く無視した発言でしかありません。
上記の通り、献血というのは誰しもが出来る事ではありませんし、血液製剤はヒトの血液からしか作ることが出来ません。人工的に血液を作ることが出来ればこの問題は解消されるでしょうが、恐らく当分は、あるいは永久に無理でしょう。
その「誰しもが出来ることではないこと」「人の命を救うこと」のために協力してくれているオタク達に対して、このような心ない罵声を浴びせることは、決して看過できることではありません。
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