「B型肝炎ワクチン追加接種プログラム」に参加した話
だいたい1ヶ月振りの投稿です。
2022年3月改正の仙石線ダイヤグラムが現在鋭意制作中のため、今しばらくお待ち下さい。
今回は、日本赤十字社が行っている「B型肝炎ワクチン追加接種プログラム」に参加した際のお話です。
1. B型肝炎ワクチンとは
B型肝炎1は、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされるウイルス性肝炎である。主に血液等の体液によってヒトからヒトへ伝播する。針刺し(医療者の針刺し事故や注射器の使い回し)、輸血、性行為が主な例である。それ以外にも、保育所内で集団感染した例や、相撲部で集団感染した例(皮膚と皮膚の接触によるものと推定)もある(参考)。
かつて日本では1988年まで、集団予防接種等で注射針の使い回しをしており、それによってB型肝炎ウイルスに感染した人がいる。現在、推定感染者数は150万人となっている。
B型肝炎ワクチン(以下、単に「ワクチン」)はこのHBVからの防御策として非常に有用である。厚生労働省検疫所のページでは、「多くの国では、小児の8%から15%がB型肝炎ウイルスに持続感染していましたが、予防接種によって、予防接種を受けた小児における持続感染の割合が1%未満に減少しました。」と記載されているほか、世界保健機関(WHO)も「出生後出来る限り早い時期から接種することが望ましい」としている。
但し、このワクチンは通常複数回の接種を必要とし、例えば今回接種された「ヘプタバックス®-Ⅱ 水性懸濁注シリンジ0.5mL/0.25mL」(MSD株式会社)の添付文書では、「B型肝炎予防の場合、0.5mLずつを4週間隔で2回、更に初回注射の20〜24週後に1回0.5mLを皮下又は筋肉内に注射する」と記載されている。
2. 「B型肝炎ワクチン追加接種プログラム」とは
「B型肝炎ワクチン追加接種プログラム」は日本赤十字社が日本国政府から受託して実施している事業である。
前記の通りワクチンはHBV感染予防に有用であるが、HBVに対する抗体(HBs抗体)を持たない人がHBVに暴露された場合ワクチン接種のみでは不十分であり、これに加えて「免疫グロブリン製剤」と呼ばれるHBs抗体を多量に含む製剤を投与する必要がある。
この免疫グロブリン製剤はHBs抗体の量が多い人の血液から製造するのだが、日本では原料となる血液の内96%を輸入に頼っている。
これに対して国は、国内のみで免疫グロブリン製剤を製造できるように日本赤十字社と協力してこのプログラムを実施している。
具体的には、既にHBs抗体を保持している人にワクチンを追加接種、その2〜4週間後に成分献血で血漿を回収しそこから免疫グロブリン製剤を製造するというものである。2〜4週間後なのは、ワクチン接種後にHBs抗体が最大に増加するのがこの期間だからである。
3. プログラムの実際
私の場合大学時代にすでにワクチンを3回接種し終えており、既に10回以上献血していたこともあり、日本赤十字社から協力依頼の手紙が来ました。
大学時代に打ったワクチンは皮下だった記憶ですが、今回は筋肉注射だったのでびっくりしました。
私「あれ、筋注なんですね」
先生「筋注の方が抗体のつきが良いから」
ちなみに新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)ワクチンが筋注なのもこれと同じ理由です。日本で皮下注射が主流なのは、かつてワクチン接種で筋注をしたことにより大腿四頭筋拘縮症となる児童が多く確認されたことが原因となっている(参考)。
そしてワクチン接種から3週間後に再度献血センターに行き、成分献血を行った。今回は通常の480mLではなくやや多めの530mL採取された。
そして今日、日本赤十字社から手紙が来た。
「国内製造用原料血漿として必要なHBs抗体価は、CLIA法2で20,000mIU/mL3ですが、貴方の場合は17,000mIU/mlであり原料として使用することが出来ませんでした。そのため、いただいた血漿は通常の血液製剤として使用させて頂きます。」
・・・なんだと。
3週間後ではなく2週間後であれば20,000mIU/mLを越えていたのだろうか・・・。いずれにせよ今回のプログラムの手助けになることは出来なかった。
ただ、日本赤十字社は今後もプログラムを継続していくようなので、機会があればまた協力してみようと思う。血液製剤はヒトからしか作れないから、協力できるのであればそれに越したことはない。
脚注
- 名称の通り肝炎ウイルスには複数種類あり、現在はA型からE型まで5種類ある。
- 化学発光免疫測定法。抗体価測定法の一つ。
- IUは国際単位の事。至適条件下において、温度30℃で1µmolの基質を変化させられる酵素量を1IUと定義されている
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