秋田行きカシオペア紀行を撮る。その3/列車を撮りに行ったら心肺停止の人を見つけた話(2024年12月1日)

カシオペア紀行が通過し、次の撮影地・本楯駅 – 南鳥海駅間の第二本楯踏切へ移動しようとしていた時のことでした。


撮影地から国道7号へ下り、山側の歩道を歩っていた時のこと。

私「ん、なんでこんなところに三脚が?」

ガードレールに三脚が立てかけてあります。その雲台にはレンズしか乗っておらず、三脚も変に傾いています。

父「どうした、早く行かないと」

私「いや、あれなんか変じゃない?」

父「うーん、片付けの最中なんじゃない?」

確かにそう言われればそうも見えますが、レンズだけを三脚に残すでしょうか?

私「ちょっと見てくるから、父は先に行ってて」

私はそう言い、1人国道を渡って海側へ。三脚の周りを見ますが、ぱっと見荷物の類はありません。

変だなと思いながら足元を見ると、グレーの物体が。大きさ的には登山用のリュックか寝袋。しかしこんな屋根もなく、波が砕ければ飛沫を被りかねないこんな場所で寝る人はいません。

そう思いながら物体を触ると・・・。

 

 

 

 

私「人だ・・・」

人が倒れていました。

 

 

 

 

私「おい!」

よく見ればわずかながらニット帽の下に顔が見えます。

私「どうした?!」

必死に肩を叩きますが返事はありません。

父「ん、どうしたどうした」

私の大声に気づいた父が来ました。

私「人が倒れてる!」

父「ええっ」

私「お、お、俺はどうしたら」

父「俺が心マするから、お前は救急車電話しろ」

父は倒れた人を素早く仰向けにすると、心臓マッサージを開始しました。私は119番に電話です。

救急「救急ですか、火事ですか」

私「救急です。心肺停止、意識不明の60代から70代の男性」

救急「今はどのあたりですか」

言われてあたりを見回しますが、めぼしいランドマークはありません。近くにあるのは「あつみ温泉ICは3km先右折」の緑看板か、「道の駅あつみまで2.5km」の看板くらいしかありません。

救急「なにか目印になるようなものはありませんか」

私「うーんと、国道7号、小岩川駅とあつみ温泉駅の中間点くらいとしか」

救急「わかりました、今からあなたの携帯電話のGPSを利用して位置を確認します」

そう、今は携帯のGPS機能を使って消防の司令センターで位置が正確にわかるのです。なら最初からそれを使った方が良かったのでは。

救急へ現状を伝え、あとは救急車の到着を待つのみです。

私「どう?」

父「うーん、だめかもしれん」

私たちが山を降りたのは撮り鉄集団の中でも最後の最後。先行した人々が気づかなかったということは、倒れてから相当な時間が立っていることになります。

後にわかることですが、患者の近くにはマウントからもげた一眼レフカメラが転がっていました。警察の方がデータを確認したところ、カシオペア紀行通過の数分前までは試し撮りの写真が残っていたそうです。しかし本番の写真が撮れていないとなると、最低でもカシオペア紀行通過から私たちが発見するまで、大凡20分は倒れていたことになります。心配蘇生が行われていない場合、心停止から10分で救命率は0%となることを考えれば、この時点で既に絶望的だったことになります。

父が心マをしている間、私は持ったままだったカメラバッグや三脚を車に戻し、その後周りに遺品がないか捜索をしました。

 

通報から7分程度で、鶴岡市消防本部温海分署から救急車と援護の消防車が到着。救急隊に引き継ぎを行うと、患者は病院へと運ばれて行きました。後に聞いたところ、関東から来た方で、搬送先の病院で死亡が確認されたそうです。

 

救急車を見送ると、消防の方々が声をかけてきました。

消防「すみません、発見当時の状況を教えて欲しいのですが」

ここからが大変でした。いやここまでも大変だったのですが。

消防の方々に発見当時の状況を説明していると、温海交番から警察官2名が臨場。

交番「発見された方ですか?」

私「はい」

交番「すみません、発見当時の状況を教えて欲しいのですが」

また事情聴取。

すると今度は鶴岡警察署から刑事第一課の刑事と鑑識官が。

刑事「すみません、発見当時の状況を教えて欲しいのですが」

鑑識「すみません、発見当時の状況を教えて欲しいのですが」

私・父「」

そう、何度も何度も、それも別の人から事情聴取されるのです。私たちが第一発見者であり、「供述が二転三転していないか」と確認するためなのですが、それでも同じ話を何度もしないといけないのでうんざりします。

合わせて父は心肺蘇生対応をしたため、鑑識官とともに現場検証に。現場検証が終わると今度は供述調書作りとなるのですが、この時対応した刑事さんが悪く、自分の話している内容がうまく伝わりません。

刑事「これって〇〇ってことですよね」

私「いや××です(それ3回目じゃん)」

といった具合。この時発見から2時間が経過し、時刻は10時半。本楯へ行くことを考えればそろそろ移動したい時間でした。

私「すみません、私たちこの後も撮影したいんですけど」

刑事「うーん、じゃあ私が供述調書書いておくので、後で鶴岡署まできていただけますか」

私「わかりました」

ということでようやく解放。本楯へ向かうことができたのでした。


生を受けて20年以上経ちますが、心肺停止の人を見つけたのはこれが初めてでした。自動車学校の講習や、大学の救急学の講義で心肺蘇生法は何度も習いましたが、やはり実際の現場でテンパってしまってはいけませんね。反省です。

ただ、今回この事件に遭遇して、次はもっと冷静に、より良い対応ができると思います。確証はありませんが。というか二度とこんな場面には遭遇したくありませんが。

 

ちなみに日本赤十字社や各地の消防本部では、一般の方向けの救命講習講習会を開催しています。

もし気になりましたら受講してみてください。